はじめに
本記事はKINKI KNIGHTS GWアドベントカレンダー1日目の記事です.
著者はレスコン機構担当のぱぁです.
KINKI KNIGHTSでレスキューロボットコンテスト(レスコン)に出場するにあたり,被災者救助用のマニピュレータとして平行リンクを用いたロボットアームを製作しました.
製作の際に様々な教科書やサイトを渡り歩いたため,ロボットアームの要件定義→逆運動学→トルク計算までをまとめたサイトがあると便利かと思い,今回執筆しました.
なぜ平行リンクを採用したかについては大会後にでも追々機会があれば書きたく思います.
目次
- 平行リンクを用いたロボットアームについて
- 要件定義
- 座標計算と逆運動学
- 可動域とトルク計算
平行を用いたロボットアームについて
本記事内では平行リンクを二つ用いることで,手先の水平を保つロボットアームのこととします.
レスコン2024にて実際に製作したロボットアームのCAD
関節ごとにアクチュエータを配置するロボットアームとの違いは主に下記です.
- メリット0:見た目がカッコイイ!!!
- メリット1:手先の水平条件を機構的に拘束できる
- メリット2:手首部分のアクチュエータ数を削減できる
- メリット3:関節部のアクチュエータを土台に配置することで低重心化により,回転時のブレを低減できる
- デメリット1:モータのトルクが必要
- デメリット2:リンク機構の設計が面倒
手先を完璧な水平状態に保つのは制御的には大変なので機構的に拘束できると嬉しいですし,アクチュエータ数の削減も回転時のブレ低減も制御的に嬉しいですね.
要件定義
ロボットアームの設計要件として今回は
- ペイロード(ロボットアームの持ち上げ可能な最大荷重)
- 可動域
を考えました.
他にもアームの移動速度や再現性などが挙げられると思いますが,今回はこの二つに絞って考えたいと思います.
実際の要件
- ペイロード:1kg(救助対象者の重量からマージンを考え決定)
- 可動域:画像参照
救助対象者回収時の最大アーム延伸時
救助対象者持上時の最大アーム引上時
使用部品
- 材質:アルミ2000番台 厚さ3mm,3Dプリンタ(PLA)
- サーボモータ:KRS-4034HV ICS
- 定格電圧:11.1V
- 最大トルク:41.7kgf・cm
- 最高スピード:0.17s/60°
- 最大動作角度:270°
- 最大消費電流:3.1A
座標計算と逆運動学
座標計算を行うため,ロボットアームを下図のように簡略化します.
以降の計算はアームの重量などを無視して計算します.
手前と奥に腕があるが平面に簡略化できる
座標は幾何的な計算で算出できる. $$ x_1=l_1cosθ_1+l_2cosθ_2-l_3cosθ_2,x_2=l_1sinθ_1-l_2sinθ_2+l_3sinθ_2 $$
後は逆運動学を解くことで,サーボモータへの入力でハンドの座標を決定できるようになる. $$ cosθ_1=\frac{x_1+l_3cosθ_2-l_2cosθ_2}{l_1},sinθ_2=\frac{x_2+l_1sinθ_1-l_2sinθ_2}{l_2} $$
解けました,嬉しいですね.
可動域とトルク計算
可動域を満たすようにアームの長さを決定しました.
適切な長さの決定法があると思うのですが残念ながら知らないので分かる方は教えていただけますと幸いです.
$$ l_1=180[mm],l_2=220[mm],l_3=40[mm],W=10[N] $$
上記の値を用いてサーボモータにかかるトルクを計算していきます.
トルクの値は
$$ T_1=Wl_1cosθ_1,T_1=W(l_2-l_3)cosθ_2$$
となるため,値を代入すると $$ T_1max=T_2max=1.8[Nmm]$$
と求まります.
今回採用したモータのトルクが4.0[Nmm]なので安全率2程度となりました.
※アーム自体の重量を無視していることには注意が必要です.
おまけ
Inventorでは適切な材料と負荷を設定することで応力解析や変位解析ができます.
今回は厚さ3mmのアルミ板金を用いたため応力は余裕なので解析結果は真っ青
1mm弱の変位が発生すると結果が出ているが実際には加工精度などからより誤差が発生することを忘れずに
アームの材料が適切かどうかをここで確認できるので,木材やアクリルなどで設計し強度に不安がある場合は応力解析という手段があることを覚えておいて損はない.
最後に
土台部分にアクチュエータが集約されてると見た目がスマートでかっこいいですよね.
皆さんも平行リンクを用いたロボットアームを作ってみて下さい!
GWアドカレ中にハンドのリンク機構について解説した記事を執筆する予定ですのでそちらも見ていただければ幸いです.
明日はKINKI KNIGHTSのメンバーが初心者向けのSTM回路設計についての記事が更新するようなのでぜひ見てみて下さい.