CoRE2025 ストライダーの設計紹介

 CoRE2025 ストライダーの設計紹介

皆さんこんにちは。KINKI KNIGHTSのラーメンおじさんです。

この記事はKINKI KNIGHTSアドベントカレンダーの1日目の記事になっています。 今日からクリスマスまでの25日間、KINKI KNIGHTSのメンバーがロボコンや団体に関連する記事を、 様々なテーマで毎日綴っていきます。 お楽しみに!!

さて、今日のテーマはCoRE2024に出場する四足歩行ロボットについてです。

CoRE2025って何?ストライダーって?

CoRE2025は、次世代ロボットエンジニア支援機構が主催するロボコンで、今年で2年目を迎えます。 複数チームのロボット同士が対戦する形式のルールで、「同盟」と呼ばれる他のロボコンではあまり見ない仕組みがあり、ロボットの性能のみならず複数のチーム連携や戦略も問われる大会になっています。

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CoRE2025に出場するロボットは大きく4種類に分かれています。

  • アタッカー:主力となるロボット。ディスクを発射し、相手チームを撃破することを目的に戦う。
  • ビルダー:フィールド上に配置されたブロックを運搬・配置し、防壁を構築したり他のロボットの通行ルートの開拓を担います。
  • オートターレット:自動操縦でボールを発射して攻撃するロボット。機体自体は大会実行委員会により用意され、出場者は制御システムのみを開発する。
  • ストライダー:四脚のロボットで、フィールド上のエリアを走行する。走破すると味方の同盟にバフがかかる。

KINKI KNIGHTSのCoREへの挑戦は今年が初めてです。 昨年度はレスコンへの出場にリソースを投入していたため、参加を見送っていました。 今年は少し余裕が出てきたこともあり、レスコン、CoRE、そして一部メンバーはキャチロボと、頭のおかしいスケジュールで活動しています。本当に尊敬です。

もともとエントリー段階ではアタッカー一本で出場する予定をしていましたが、自分自身が四足歩行ロボットへの憧れがあり、この機会を逃すと一生後悔するだろうなと感じたことからストライダーの開発に踏み切りました。

リソースが無い中、ストライダーの開発を許してくれたメンバーには感謝しかありません。

ストライダーの構想

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ストライダーの概要はCoREのルールで次のように決まっています。

  • 各脚が2~3自由度の脚を4本持っていること
  • テオヤンセン機構やチェビシェフリンク機構を用いた広義の「歩行ロボット」は許可しない
  • 4脚直立状態で幅1000mm×奥行き1000mm×高さ1200mmを超えてはならない
  • 脚の各リンク長は200mm~400mmでなければならない
  • 機体重量は30kg以下

さらにKINKI KNIGHTSの制約として予算をあまりかけられないことから、材料費は3万円までと設定しました。 最も、開発者の自宅に元々転がっていたアルミ板やアクチュエータ類は金額に含んでいません。 それらを合わせると、予算規模としては10万円程度になります。

また、本年度のルールではストライダーが走破するルートは、段差はあれど直線のルートになっていたため、市販の四足歩行で見られる3自由度の脚では無く、2自由度で十分だと判断しました。 また、本筋であるアタッカーの開発に影響を及ぼすわけにはいかないので、加工は極力CNCとし、アタッカーの開発スケジュールより1か月早く各期限を設定しました。

脚ユニットの構造

ストライダーの設計はまったく同じ設計の脚ユニット4つと、それらをつなぐ構造材からなっています。 脚ユニットは左右でミラーになっていますが、それ以外の箇所については全て同じ構造です。 image.png (78.2 kB)

各脚ユニットは腿と脛の2リンクの脚とそれを駆動するアクチュエータ、接地圧検出部で構成されています。

腿・脛

腿と脛はT6のアルミ板で構成されています。

当初は脚を肉抜きする事を検討していましたが、脚接地時の衝撃に関する知識があまりなかったため、剛性が不安でいったんは肉抜きをしないで進めることにしました。

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CAEを使った解析や重量算出は自分は知識が全くなく、心強いメンバーのサポートに助けられました。 最終的にストライダー全体の重量概算が20kg程度になることが判明し、肉抜きの必要はなくなりました。

また、脛リンクを片持ちにすると荷重方向に膝関節が曲がる恐れがあることから、 腿リンクは2枚構成とし、脛リンクを両持ちにしています。

アクチュエータ・関節

アクチュエータはDJIが販売しているブラシレスモータのGM6020と中華の安くて150kgcm出力できるDS51150を採用しています。

元々は膝関節の駆動に並行リンクの機構を構想していたのですが、加工に手間のかかる軸物パーツが増えてしまうのと、脚同士の干渉を避けるため機体長が長くなってしまう事から再設計を行い、タイミングベルトによる駆動に変更しました。 image.png (510.6 kB)

タイミングベルトを採用するとベルトがたわまないよう、脚の付け根とプーリの駆動軸を同軸に配置する必要があります。(腿リンク上にアクチュエータを配置する手法もありますが割愛します。)

中空構造のGM6020を脚の付け根の関節のアクチュエータとして採用することで、その中に膝関節用のタイミングプーリの駆動軸を通しています。

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この軸周りの設計が個人的にはかなりの推しポイントになっています。

1軸目のGM6020は1軸目のリンクとモータ前面のネジ3点で固定されています。 GM6020の構造上、ストライダー胴体部とはモータ裏面のネジで締結することになるため通常であれば脚が片持ち状態となり、モータ内部のベアリングにねじれる力がかかってしまいます。 そこで1軸目リンクの板にベアリングを取り付け、2軸目のシャフトと接続することで1軸目を両持ち構造にしています。

また、この構造にはもう一つ効果があり、二軸目のシャフトが長い事によるたわみも中持ち構造になることで防止しています。

接地圧検出部

接地圧検出部は、その名の通り脚の接地圧を検出するためのセンサになります。 今大会で四足歩行が走破するフィールドには段差があるため、平面のみの歩行とは異なり各脚が接地しているかを検出する必要があります。

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その他にも、後述する重心制御を取り入れて安定した制御性を実現するため、この機構を導入しています。 接地圧検出部と大げさに言ってはいますが、単にロードセルをくっつけているだけです。 耐荷重20kgのロードセルの先端にTPU製のクッションを取り付け、接地している脚にかかっている荷重を測定します。

もっとも、ロードセルに詳しい人からは、「ロードセルの接地角度が脚の状態によって変わるんじゃあ使い物にならないじゃん!」と指摘されそうですが。。。 実は第一関節のGM6020にはトルクフィードバックの機能があり、制御している際の出力トルクを取得することができます。

腿と脛のリンクが両方とも完全直立状態になることは体勢的にあまり想定されていないため、 関節角度によって適した方の手法で測定した接地圧を採用することでロードセルが地面に垂直に近い体制になった際の精度低下を補完します。

とはいえ、少し不安はありますが、最悪力業で何とかします。

制御構想

制御の基盤技術はアタッカーやレスコン機体と同様のCANを介したシステム構成になっています。 センシングは現在のところ、RealSenseを想定しています。 image.png (58.9 kB)

制御は脚の歩容モデルなんて難しいことはわからないので、重心制御ベースで前進・後進ができるものを考えています。 機体前後方向と機体左右方向の重心位置を独立して制御し、制御対象を各脚先端の位置とした制御モデルを組む予定です。 ここで重心ベースの制御を行うために、ロードセルが必要だったわけですね。 脚の先端位置については、100Hz程度の2軸同期制御ができるよう構想しています。

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初めは安定しやすい三脚同時接地の歩容から開発して、余裕があればより早く歩行できる2脚同時接地にも挑戦したいと考えています。 もっと余裕があれば、回転もできるようにしたいな。

今回解説に使用した概要の一部は、CoRE実行委員会への説明の際に用いたものです。 下記ボタンからダウンロードいただけます。 スライドテーマは団体代表がカッコよく作ってくれました!

ストライダー開発計画.pptx

今後の展望

今後のスケジュールとして、1月には自立歩行ができるようになればと考えています。 また、2月に兵庫県の川西市のイベントにてストライダーを含むロボットの展示・操縦体験会も予定しています。 頑張って間に合わせなくちゃ……

さらに、CoREの後に控えているレスキューロボコン2025にも、4足歩行の機動力を生かして出場できないかと画策しています。 詳細はまだ決まっていませんが……

現状では、先述したようにロジックベースの歩容アルゴリズムを考えていますが、 最近流行っている、シミュレーションで機械学習を回して実機に落とし込む制御手法も取り入れられればと思っていたりします。 メンバーに機械学習やシミュレーションのノウハウを持った人がいないため、そのような技術を持った仲間を積極募集しています。 我こそは!と思う方はぜひKINKI KNIGHTSへの入団をご検討ください。 高校生や学生、社会人からなる愉快なメンバーがあなたのことをお待ちしています!

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宣伝ばかりになりますが、KINKI KNIGHTSでクラウドファンディングを開始しました。 ストライダーのCADがもらえるプランも用意しておりますので、こちらもよろしくお願いいたします!

最後までお読みいただき本当にありがとうございました! 明日はかどや君による、「TecAward2024に行った話」です。 今後も、KINKI KNIGHTSとアドベントカレンダーをよろしくお願いいたします!!


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