皆さんこんにちは。KINKI KNIGHTSのラーメンおじさんです。 本記事はKINKI KNIGHTS アドベントカレンダー2025 7日目の記事です。 ゴールデンウィークもあっという間に終わりに近づいてきていてびっくりです。
ここ最近ロボコン界隈にはブラシレスモーターブームが到来しています。
KINKI KNIGHTSではCoRE2025の射出機構に使用するブラシレスモーター ID-659ZAを株式会社マブチモーター様よりご提供いただきました。
この記事では、ID-659ZAの使用感や動かし方について紹介いたします。
ID-659ZAのメリット・デメリット
ID-659ZAをロボコンで使用する個人的メリットは大きく3つあると思います。
- パワエレ回路(モータードライバ)が不要
- エンコーダが内蔵されている
- 制御が比較的簡単にできる
逆に、デメリットは次の2点だと思います。
- 逆転できない
- 位置制御には向かない
回路
CoREで使用したブラシレスモーター用基板です。
高校生のチームメンバー(@yumeno_robot)が設計してくれました!
CANで制御情報を受信し、ブラシレスモーターを2台同時制御します。
コネクタ

コンタクトは電源ピンと制御信号ピンで異なるサイズのものが使用されています。
CoREではモーター側のコネクタをmolex製の物から、XHとXT30に付け替えて使用していました。
制御信号と駆動電源

駆動電源は8~21Vのため、8セルバッテリーは微妙に定格電圧外になります。(もっとも絶対最大定格は28Vのため自己責任の範疇で試してみるのもありかもしれません。)
注意しなければならないのは、GNDが駆動電源と制御信号で共通になっていることです。 駆動電源と制御電源を絶縁するのであれば、絶縁ICを使用する必要があります。
制御信号はHighでOFF、LowでONとなります。 他のモーターや基板とON・OFFが逆転することになるため、回路設計時に注意が必要です。
制御信号線をプルアップするか、制御回路にインバーターを挟むことで、マイコンが動作していないタイミングで制御信号がHighになるよう設計しましょう。
PWM入力
モーターを回す際にはPWM波を入力します。
周波数が20kHzあるため、絶縁回路の設計時に注意が必要です。
通常のPWMサーボは50Hz程度の周期のためフォトカプラで絶縁すれば十分ですが、20kHzの信号をフォトカプラに通すと立上り・立下り時間で波形が歪み正しく制御できない可能性があります。
CoREで使用した基板では、2電源間で各1入出力を持つADuM121Nを使用しています。
FG出力
ID-659ZA内蔵のエンコーダの出力信号です。
ID-659ZAは正転のみ想定されているモータのため位置制御には向いていません。
PWM波で速度をフィードバック制御するためにモーターの回転速度を取得するのに使用しました。

モーター軸1回転で3パルス出力されるので、一定時間内のパルス数をマイコンで計測して回転速度を算出します。
ブレーキ入力
信号LOWでショートブレーキがかかります。
正直ロボコンでブレーキ機能は必要ないため、5V信号を直結して使用しています。
必要であれば安価なフォトカプラで絶縁しても良いでしょう。
制御
回転速度の取得とフィードバック制御
STM32F3マイコンのタイマー機能で外部クロックとしてFG信号を取り込むことで取りこぼしを防ぎ、正確な回転速度の算出を実現しています。
詳細はST社のタイマのガイドブックや過去の記事で解説しています。
同じPWM入力でもモータ軸の負荷次第で回転速度が変わるため、取得した回転速度を使ってPID制御をかけると安定し多速さで回転します。
安全機能が働いた場合の復帰
ID-659ZAにはいくつかの保護機能が搭載されています。
- 低電圧保護
- 過電圧保護
- モーターロック保護
- 電流制限機能
このうち、モーターロック保護以外は電圧復帰や一定時間後に自動で復帰します。
モーターロック保護機能のみ、復帰時に次のどれかの措置が必要になります。
- 電源再投入
- ブレーキ端子切り替え
- PWM入力15ミリ秒以上High
微小なPWM入力で軸が回転しない場合にもモーターロック保護機能が働くため、ゆっくりDutyを上げるのではなくDuty0から目標速度のDutyまで一気に出力を上げるのが無難です。
モータ回転速度を監視して制御側でモーターロック保護を検出し、アラートを出したり保護の復帰動作をするようなプログラムにすることをお勧めします。
使用した感想
PWM波を入力するだけで動作するため、非常に簡単に動かせました。 回転速度や発熱も問題無くかなり使用しやすいイメージです。
またドライバが不要なため、発注した新規基板が届くまで、Arduinoだけで動作させることができました。 手っ取り早く動作試験をしたい場合は電源絶縁を考えなければ手軽に動かせるのは大きなメリットだと思います。
他のマブチモータと軸締結の穴位置が異なるため、平歯車やベルトで減速する必要がある点は早い段階からハードと打ち合わせが必要かもしれません。
まとめ
マブチのブラシレスであれば、学ロボ・高専ロボコン参加校であればロボコン支援の対象として支給していただくことも可能ですので機体製作コストを抑えることができます。
またブラシレスドライバ基板も不要なため、駆動電源の絶縁を気にしないのであればArduinoやRaspberryPi PIcoだけで制御が手軽にできるメリットもあります。
是非、ID-659ZAを試してみてください!
最後に、CoREの機体製作にあたりモーターを支援してくださった株式会社マブチモーター様に深く感謝いたします。
株式会社マブチモーター様には射出機構のID-659ZAの他、足回りに使用したRZ735、射出回転機構のRS555をご支援いただきました。
明日が最後のGWアドカレです。お楽しみに! 進捗祭りのGWはまだまだこれからだ!!